2009年7月23日木曜日

ゴルの虜囚 65 【CAPTIVE OF GOR】

 → 読む前の注意
 → 目次

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


7. 他者と供に、北へ連れて行かれる(1)


 わたしのご主人様のターゴは奴隷商です。
 何の費用もわたしにはかかっていません。
 わたしがターゴの奴隷の一員にされるちょっと少し前、ほんの2、3日前に、ターゴは無法者のタルン戦士に攻撃されました。ターゴは、惑星ゴルの高緯度で温暖な地帯のコ=ロ=バ市から、北東寄りを4日ほど北上していました。ゴルがこの世界の名前です。ターゴはコ=ロ=バの東西の丘陵地帯や牧草地をたどり、タッサと呼ばれる海の沿岸から200パサング位離れた、ローリウス川岸のローラに向かっていました。ローラは河港の小さな貿易の街です。建物は主に木造で、大部分は倉庫と宿屋です。材木、塩、魚、石材、毛皮、奴隷など、さまざまなものの手形交換所があります。ローレウス川のタッサへの注ぎ口は、自然とゴルの重要な身分である商人に統治されているリディアスの自由港となりました。テレタス、ハルネス、アスペリチェや、カル港やヘルムートスポートのようなコスやテュロスの沿岸、遥か南のシェンディやバジにまで、商品はリディアスからタッサの島々に向けて船に乗せられます。そして当然リディアスから様々な商品、主に粗製品の道具類、天然金属や布が、平底の荷船で運ばれたり、河に沿って木々の茂る道をタルラリオンに引かせたりしてローラに運ばれ、売られたり内地の配給になります。ローリウス川は曲がりくねった、長くて穏やかな、流れの緩やかな川です。川幅は狭く、コ=ロ=バよりずっと下で、ゴルでもっとも偉大な街と言われるアルより上に流れる、遥か南の巨大なヴォスクの脅威である流れの急なところもありません。ヴォスクのように、だいたい西側の方向に流れていますが、ローリウスのほうが偉大なヴォスクより、南西に傾いています。

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訳者の言い訳と解説

今回は地名がたくさん出てきますね。
地図が見たい方は、「極東のゴル」さまを参照してください。
 → http://www.geocities.jp/tdmxb922/gormap.htm

 1パサングが0.7マイル(約1.12km)なので、200パサングは140マイル、約224kmです。
 → ゴルの世界 The World of Gor 7

タルラリオンはゴルの動物です。
 → ゴルの世界 The World of Gor 5

ヴォスク川(Vosk)は、動物のボスクとタールが名乗るボスク(Bosk)とはスペルが違います。


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2009年7月12日日曜日

ゴルの虜囚 64 【CAPTIVE OF GOR】

 → 読む前の注意
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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


 ターゴがわたしたちの横にきたので、ワゴンに乗るんだろうと思ったら、そうではありませんでした。ターゴは荷車を出来るだけ軽くしたいらしく、それはリーダーだとしても歩かなければいけないということです。
 いつ「ハル=タ!」とターゴが声を上げ、またぶたれるかと気が気ではありません。
 鞭の支配下で、バンドをかけられて、すすり泣きました。
 でもわたしは地球の、パーク・アヴェニューのエリノア・ブリントンよ!わたしはお金持ちで、美人で、こぎれいな装いをして、趣味がよくて、洗練されてきたのよ。十分な教育を受けて見識も広いわ。決断力があって、自信に満ちていたわ。富も美しさも欲しいままに躍進してきて、社会で相応の地位にいたわ。才能が与えられたことも、すばらしい能力も、超一流に聡明な個性も当然わたしのものよ。要するに優れた人間なのよ!すべてわたしにふさわしいものを持ってたのよ、そういう人間なんだから!わたしはそういう人種なのよ!
 それなのに、どうして遠い世界にいるのでしょう。一人ぼっちで友達もいない、わたしの言葉も話せない野蛮人の中に、埃にむせ汗にまみれ、服も着ないで引き具をかけられ、鞭打ちの元に。
 ユートをちらりと見ました。
 彼女はこちらを不愉快そうに見ました。わたしが怠けたことを忘れていません。そっぽを向いてムカついていました。
 腹が立ちました。かまわないわ。あの女が何よ、バカ!
「ハル=タ!」ターゴが声を上げました。
「ハル=タ!」周りの男たちが声を上げました。
 わたしたちはまた、鞭の刺激に悲鳴を上げました。革のバンドに全体重をかけて、足を草に突っ込みました。
 わたしはうめきました。
 怠けることは許されません。
 女にも男にも、これまではいつも思い通りにやってきました。
 期末に提出するレポートの期限も延長できたし、望んだときに新しい毛皮の襟巻きも手に入れられました。一台の車に飽きたら別のにするし、欲しい物のためにおねだりしたり、甘言で巻き上げたり、悲しそうな顔をしたり、ふくれたりできました。望むものはいつも手に入れてきたのです。
 ここでは思い通りになりません。
 ここでは怠けることは許されません。鞭が目を光らせているのです。もし甘言でだませたり思い通りにする人がいるとしたら、わたしより美人で、愛想の良い人のはずです。頭にくることに、生まれて初めて、わたしに割り当てられた仕事を求められていることが理解できました。
 また鞭打たれてうめきました。
 すすり泣き、心の中で叫び声を上げ、あらん限りの力で幅の広いバンドに体重をかけました。

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訳者の言い訳と解説

 第6章終了です。
実は訳し方がわからなくて、飛ばした文章があります。
わかったらさりげなく修正します。


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2009年7月11日土曜日

ゴルの虜囚 63 【CAPTIVE OF GOR】

 
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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


6. 奴隷商ターゴとの邂逅(13)

 ターゴが大声で命令を下しながら、気遣わしげに見回しています。
 部下の一人が掛け声を上げました。
 娘たちが引き革につながれて、前かがみに荷車を引きました。
 男たちのうち二人が、後輪を押しました。
 荷車が動き出しました。
 革のバンドから身を傾けて、進んでいるふりをしました。
 この人たちが荷車を引くのに、わたしは必要ありません。前にも引いていたのですから。精一杯やっているかのように、草に足を突っ込みました。効果を上げるために、少しうっとうめいたりしました。
 ユートは嫌な感じの、疑いの目をわたしに投げかけました。ユートの小さな体は、紐に引っ張られていました。
 かまうもんですか。
 わたしは鞭で打たれ、痛みと屈辱に叫び声を上げました。
 ユートが笑っています。
 全体重を皮ひもにかけ、うめきながらありったけの力で進みました。
 荷車は動いています。
 1、2分すると、わたしがされたように、ラナが腰のくびれたところの下を鞭打たれ、屈辱と痛みに悲鳴を上げ、刺されたような赤い筋がひとつ残りました。他の娘たちが、わたしも一緒になって笑いました。ラナは人気がないんだなと思いました。ぶたれて良い気味だわ!あいつは怠け者よ!何でわたしたちがラナの分まで引っ張らなきゃならないの?わたしたちより優れてるとでも?
「ハル=タ!」ターゴが大声で言いました。「ハル=タ!」
「ハル=タ!」周りにいる男たちがどなりました。
 娘たちがいっそう精を出して引っ張り始めると、荷車のスピードが上がりました。時々男たちも車を押しました。
 二人の男が片側ずつに付き、わたしたちを鞭打って叱咤したので、わたしたちは痛みに悲鳴を上げました。
 これ以上できないくらい一生懸命引いているのに、ぶたれるのです!あえて抗議しませんでした。
 荷車は草深い野原をゴトゴトと進みました。

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訳者の言い訳と解説
 反地球シリーズを1巻からお読みの方はご存知のとおり、
「ハル=タ」はゴル語で「早く」、です。



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ゴルの虜囚 62 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

6. 奴隷商ターゴとの邂逅(12)

 手首を掴んでいた二人の男たちが、わたしを後ろからぐいと掴みました。わたしはターゴが退く後ろ姿を見つめていました。ターゴに向かって叫ぶ勇気はありません。もはや彼はわたしに興味を失っていました。二人の男はわたしを荷車の轅(ながえ)に引きずっていきました。
片方に10人、もう片方に9人いました。
 わたしをぶった娘、ラナが前の位置にいました。にわかに、ラナに引き具が付けられていることに気付きました。留め金のついた革のバンドを手首にはめられ、持ち場につながれています。体には左肩から右の腰に、ずっしりとした革の幅広い輪がかけられ、荷車の轅にボルトで締められていました。他の娘たちも同じようにつながれていました。留め金のついた革バンドがわたしの手首にはめられ、肩から体に重々しい革の輪を通されました。
 わたしはすすり泣き、かろうじて立っていられるようでした。足ががくがくします。背中全体がひどくズキズキします。涙の味がしました。
 男がわたしの体のバンドを調節し始めました。
 近くの向かいにいた、背が低く、黒髪で真っ赤な唇の、薄墨色の目をした娘が微笑みかけてきました。
「ユート」
 彼女は自分を指差しながら言い、今度はわたしを指差して尋ねました。
「ラ?」
 荷車につながれた娘たちを見ると、左の太ももにわたしのと同じ印がついています。
 絶望を感じました。もし誰かがわたしたちを見たら、わたしが他の娘と何の違いもないと、あの人たちと同じだと思うじゃないの!
 手首のバンドを引っ張りましたが、厳重に固定されていました。
「ユート」
 背の低い、黒い瞳の娘が自分を指差して繰り返し尋ねました。
「ラ?」
 男が体のバンドを締めると、ぴったりと収まって、立ち去って行きました。わたしは引き具を付けられたのです。
「ラ?」
 黒い瞳の娘が縛られた手でわたしを指差し、しつこく繰り返しました。
「ラ?」
「エリノア」と小さな声で言いました。
「エ=リ=ノア」
ユートは微笑んで繰り返してから、他の娘に向かい、わたしを指差しました。
「エ=リ=ノア」
 彼女は嬉しそうに言いました。満足げでした。
 どういう訳か、この背の低い愛らしい娘がわたしの名前を喜んだことに、すっかり感謝していました。
 ほとんどの娘が、大した興味もなく振り返ってこちらを見ました。わたしをぶったラナは振り返りもしません。
 わたしの左側の二人前の、背が高くてブロンドがかった髪の娘が微笑み、
「インジ」と自分を指して言いました。
 わたしは微笑みました。
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2009年7月4日土曜日

ゴルの虜囚 61 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


6. 奴隷商ターゴとの邂逅(11)

 娘が、女のわずかな獰猛な力でぶちました。何度も何度も、繰り返し繰り返し、意地悪く、荒々しく、あらん限りの激しさで、何度も何度も。わたしは声を上げ、叫んで泣きじゃくってもがきました。細い革の紐の束は、情け容赦ありませんでした。わたしは草を噛み、息もできません。涙で目が見えません。何度も何度も!
「お願いやめて!」
でももう叫ぶこともできません。ただそこにあるのは草と、涙と、何度も何度もぶたれる鞭の痛みです。
 実際にぶたれ続けたのは2,3秒だけなのかもしれませんが、1分以上ではなかったと思います。
 ターゴがその娘、ラナに何か言うと、革の刺すような痛みの雨が止みました。
 二人の男は足首を放し、手首を掴んでいた二人はわたしを跪かせました。わたしはショックを受けていたに違いありません。目の焦点が合わず、荷車のところで女たちが笑っている声が聞こえました。草の上に吐くと、二人の男が後ろから髪を掴んで吐いたところから引き離しました。きれいな草のところの地面に顔を押し付けられて、頭の向きを変えられ、口とあごについた嘔吐物を拭い取られました。
 それからまた男たちに手首を掴まれ、ターゴの前に引きずり上げられ跪かされました。
 ターゴを見上げました。
 片手にわたしの服を持っているのが見えて、それをかろうじて理解できました。こちらを見下ろしています。もう片方の手には、わたしをぶった鞭の束がぶら下がっています。女は男の一人に、荷車の自分の持ち場に連れ戻されていました。背中全体が、脚が、腕が、肩が焼け付くようでした。
 二人の男が、わたしの手首を放しました。
「カジュラ」
 ターゴが言い、鞭を振り上げました。
 ショックです。
 わたしはターゴの足元の草に額を押し付けました。
 ターゴのサンダルを手に頂き、足に唇を押し当て口づけをしました。
 女たちの笑い声が聞こえます。
 もうわたしをぶったりしないわ!
 ターゴを喜ばせたはずです。
 震えて涙に咽びながら、もう一度足に口付けしました。満足したに違いないわ、そうに決まってる!
 ターゴは簡潔な命令をして、ローブをひるがえして立ち去りました。
 わたしは顔を上げて見送り、すすり泣きました。


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訳者の言い訳と解説

 鞭ってなんとなくイギリスの先生が持つようなのを想像してたら、
バラ鞭みたいですね。
 今回は皆さんが期待している(?)SM色が強いシーンなので特に気を使いました。
うまく盛り上がってるかな?
こうしたら良いんじゃない?ってところがあったら、
特にまこちゃん、よろしく!



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ゴルの虜囚 60 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


6. 奴隷商ターゴとの邂逅(10)

 ターゴは部下に何か言いました。
 すぐさまターゴの前で、わたしは服を剥ぎ取られました。
 叫び声を上げると、荷車の轅(ながえ)のところに居る女たちが笑いました。
「カジュラだ!」
男の一人が声を上げ、わたしの太ももを指差しました。
 体中が紅潮しました。
「カジュラだ!」
ターゴが笑っています。
「カジュラだ!」
他の人たちも笑っています。轅にいる女たちの笑い声と、手を叩く音が聞こえました。
 ターゴの目から小さな涙が、太った顔に滑り落ちました。
 それから、突然怒ったようでした。
 つっけんどんに、ものを言いました。
 わたしは草の上に、腹ばいに顔を突っ伏されました。二人の男たちはわたしの手首を掴んだまま、今度は別々になってわたしの頭を草の上に押し付けました。更に二人の男が来て足首を離して掴み、草の上に押さえつけました。
「ラナ!」ターゴが叫びました。
 男の一人が荷車の轅に行きました。そこで何をしたのかは見えませんでしたが、女の笑い声が聞こえました。女はすぐに荷車から離れ、わたしの後ろあたりに立ちました。
 わたしはちやほやと甘やかされてきた子でした。女の家庭教師と乳母にしばしば小言を言われて育てられたけれど、ぶたれたことはありません。やってたら即刻免職です。生まれてこの方、ぶたれた覚えはありません。
 でもわたし、エリノア・ブリントンは、鞭を打たれたのです。

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訳者の言い訳と解説

 エリノアではなくエレノアのほうが良いのではというご意見をいただきました。
実際あいまいな音なので、カタカナ表記をどうするか悩むところです。
もうすぐ名前をゴルなまりで呼ばれるようになるので、
今回はエリノアのままにしましたが、どっちにするか検討します。


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2009年7月1日水曜日

ゴルの虜囚 59 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


6. 奴隷商ターゴとの邂逅(9)

 でも大事なのは、わたしは助かったということです。すぐに地球への帰り道を買い取れるってことです。
 きっと誰か見つかるし、ここにいなくても隣の町に、英語を話して、地球へ帰る旅行券を買える人と接触させてくれる人がいるはずです。
 重要なことは、わたしは救助されて、安全だと言うことです。
 わたしは救助されたのよ。
 ターゴを不快に思い始めました。
 それに、わたしの手首を二人の男が両脇で掴んでいて欲しくないと思いました。
 手首をいらだたしげに引き抜こうとしましたが、当然自由にはできませんでした。
 男も男の力も憎い。
 ターゴは更に焦れてきていました。
「放してよ!放してってば!」
わたしは叫びました。
 でも、放してもらうことはできませんでした。
 もう一度、ターゴが忍耐強く、ゆっくりと話そうとしました。ターゴは怒ってきていると言えます。
 この男はバカで、うんざりするほど頭が悪いんだわ。こいつらみんなバカなのよ。誰一人英語がわからないみたい。黒い船の人たちの、少なくとも一人は英語を話しました。背の高い男と会話しているのを聞きました。この世界には、英語を話す人がたくさん居るのに。大勢いるのに!
 ターゴには飽き飽きしました。
「わからないわ」
大いに侮蔑と冷徹さを世界に響かせ、ターゴに言いました。尻目にもかけずそっぽをむき、身の程を知らせてやりました。



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