2009年5月17日日曜日

ゴルの虜囚 15 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

3. 絹の紐(6)

* * * *
 ベッドで目を覚ますと、まだ縛られたままでした。
 もう暗くなっていて、開いたパティオとテラスへのドアの向こうから、街の夜道の喧騒が聞こえました。カーテンが開いていたので、何万もの四角い窓がきらめいているのが見えました。多くの窓には、静かに照明がついていました。
 ベッドは汗でびしょ濡れでした。何時なのか見当もつかず、ただ夜としかわかりません。転がって化粧台の上の時計を見ようとしたけれど、顔は別のほうに向けられていました。縛(いまし)めに激しく抵抗しました。
逃げなくては!
 でも貴重な数分間を無駄にあがいても、午後の早いうちから縛られていたのと、完璧に同じに縛られたままでした。
 すると不意に、新たな汗が体に噴だしてきました。
 包丁!
 男たちが家に押し込んでくる前に、枕の下に包丁を投げ込んでいたのです。
 縛られたまま横に転がり、歯で咥えて枕をどけました。安堵で気絶しそうでした。包丁は置いたところにありました。
 サテンのシーツの上で包丁を動かそうと奮闘しました。歯を使ったり後頭部を使ったりして、手の縛(いまし)めのほうを向けました。痛いしイライラする作業だけれど、ちょっとずつ、ほんのちょっとずつ、包丁を下のほうに動かしました。一度包丁が床に落ちてしまい、心の中で苦悶の悲鳴をあげました。首のロープのせいでもう少しで窒息しそうになりながら、ベッドから半分外に体を滑らせ、足で包丁を探りました。足首は交差させられて、一緒にしっかりと結ばれていました。包丁を拾い上げるのは、ものすごく大変で、何度も何度も落としてしまいました。ベッドのヘッドボードにわたしを縛りつける、首の紐が忌々(いまいま)しかったです。涙が出ました。
 ずっと下の通りから、消防車のサイレンの音と、夜の街の喧騒が聞こえました。さるぐつわと縛(いまし)めに、黙ってものすごく苦しみ抵抗しました。ついに、なんとかベッドの足元に包丁を取ることができました。足と体を使い、自分の下から引き寄せることができました。
そしてやっと、縛られた手で包丁の柄を持ったのです!でも縛めには届かず、包丁は掴んだのに使うことができませんでした。
 包丁の先をベッドの後ろに押し込み、自分の体で支えられたので、心の中で歓喜の叫びをあげました。紐を上下に動かし、包丁で切り始めました。汗ばんだ背中で包丁の柄を支えました。四回滑りましたが、その都度包丁の位置を元に戻し、またこの作業に必死で取り掛かりました。両手が自由になったので、包丁を手に取り、首と足首の紐を切り落としました。


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訳者の言い訳と解説

 NYの描写が出てくるときは、意図的にハードボイルドな雰囲気が出るように訳しているつもりです。
でも、原文は別にそういうわけじゃないんだけどね^^;
大好きな翻訳家の淡路瑛一が訳した、"カート・キャノン"シリーズへのオマージュです。
 John Normanはご高齢でずっと本が出ていませんから、
ゴルシリーズは完結しないかもしれないと思っています。
もしそうなったら、淡路瑛一がカート・キャノンの贋作を書いたように、
最終的にはわたしが続編を書こうと目論んでいます。

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