→ 目次
<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
2. 首輪(3)
リヴィングから見えるキッチンに駆け込み、引き出しを開け、肉切り包丁を取り出しました。
包丁を手にし、荒々しく調理台の裏に回り込みましたが、何もありません。包丁を持つと少し不安が薄れ、リヴィングのテーブルの端の電話に向かいました。コードが切断されているのを見て、天を呪う気持ちでした。
家を調べるとドアには鍵がかかっているし、家にも、パティオにも、テラスにも誰もいませんでした。
心臓の鼓動は激しかったけれど、気持ちが高揚していました。
服を着て家を出て、警察に行くつもりで衣裳部屋に急ぎました。
ちょうど衣裳部屋まで行ったとき、力強くきびきびとドアがノックされたので、
包丁をぎゅっと握り締めて振り向きました。ノックは執拗に繰り返されています。
「ドアを開けなさい」と命ずる声がしました。「警察だ」
危うく気を失いそうになりながら、包丁を持ったままドアに駆け寄りました。
包丁を握り締め、ドアの前で怖くなって立ち止まりました。
わたしは、警察なんて呼んでない。この部屋で悲鳴を上げて、誰かに聞こえるなんてありえません。
電話は壊されていたし、誰かに助けを求めてもいない。ただひたすら、逃げたかっただけです。
ドアの向こうにいるのが誰であれ、警察のはずがありません。
またノックが繰り返され、頭がくらくらしました。
そのうちノックの音が大きくなり、
「ドアを開けなさい!ドアを開けなさい!警察だ!」
「ちょっと待って」
気持ちを落ち着かせ、できるだけ平静を装って答えました。
「すぐ開けます。着替え中なんです」
ノックが止み、
「わかった。早くしなさい」という声がしました。
「はい」
冷や汗をかきながらも、愛想良く返事をしました。
「ちょっと待って!」
*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:**・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*
解説
パティオとテラスって、建築用語だと思うけど、
一般的に使われてるのかな?
・パティオ スペイン風の中庭で、床はタイル張りのことが多い。(写真:by Wikipedia)
・テラス 日本語では通常1階に作られるものはテラス、
2階以上に作られるものがベランダ・バルコニー。
エリノアの部屋は最上階です。
0 コメント:
コメントを投稿