2009年5月17日日曜日

ゴルの虜囚 30 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

3. 絹の紐(21)

 自分がハンドバッグを握りしめていることに気づきました。車から走り出たときから、とにかく本能的に掴んでいたのです。ハンドバッグの中には、家を出る前に投げ込んだ、お金とジュエリーと肉切り包丁が入っています。体の向きを変え、暗い木々の間をがむしゃらに走りました。サンダルは脱げ、足は傷ついて切れ、ブラウスが破けました。枝が服と髪に引っかかり、鞭のようにおなかを打ち、痛くて悲鳴を上げました。別の枝が刺さり、頬がヒリヒリしました。逃げている間いつも近くを光が照らしたていたけれど、わたしを捕らえてはいません。光から逃走しても、藪と木をばらばらに引き裂いて押し込んできます。何度も照明の淵がわたしの上を照らしそうになりましたが、素通りしたり、わたしがかわしてはまた走りました。木々の間をつまずきながら、足からは血が流れ、息も絶え絶えでした。手は右手にハンドバッグを握り締めて、藪や枝をかき分けるとわたしの体に傷が付いていきました。もう走れないわ。木の根元に崩れ落ち、息もできずに体中の筋肉が悲鳴を上げました。足ががくがく震え、心臓がどきどきしていました。
 光がまたわたしのほうを向きました。
 なんとか這い上がり、光の前をが必死に走りました。
 すると林と藪の向こうのわたしの十五ヤードほど前方に、いくつか小さな光が差していて、空き地か何かのようになっていました。
 わたしは光の方に向かって走りました。
 空き地の中に激しくのめりました。
「こんばんは、ミス・ブリントン」という声がしました。
 わたしは立ち止まり、呆然としました。
 それと同時に、男の手が後ろから近づくのを感じました。
 弱々しく逃げようとしましたが、できませんでした。
 地面から照り返す黄色い光にさらされ、目を閉じました。
「ここがP地点だ」
その男が言い、その時、彼の声を思い出しました。午後にわたしの家にいた背が高い方の男の声です。彼はもうマスクはつけていませんでした。黒い髪、黒い目で、整った目鼻立ちでした。
「お前はずいぶん煩わせてくれたな」
そして男は別の男に向き直りました。
「ミス・ブリントンに足かせを持ってこい」


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訳者の言い訳と解説

 やっと第3章が終了です。ふぅ。
でも緊迫のシーンはまだまだ続きます。
頑張れエリノアたん!

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