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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
6. 奴隷商ターゴとの邂逅(4)
よろめきながらも笑って、彼らのほうに向かい丘を駆け降りました。
男たちのうち二人がこちらに走ってきて、荷車の脇にいたあと二人は、わたしを通り過ぎ丘の上に走りました。
「わたしはエリノア・ブリントン」わたしのところに来た男たちに話しました。
「ニューヨークに住んでいます。道に迷ったんです」
男の一人は、両手でわたしの左腕を掴みました。もう一人は、両手でわたしの右腕を掴みました。男たちはすばやく、優しくはなくわたしを引っ張って導き、荷車の人たちのところに丘を下りて行きました。
しばらく彼らはわたしを掴んだままで、荷車の横に立っていました。
青と黄色の広いストライプの絹のローブに身を包んだ、背が低く太って肉付きの良い太鼓腹の男が、かろうじてこちらを見ました。二人の男が行った丘の上を、より気にするように見つめていました。男たちはかがんで丘の上を見回していました。荷車に残ったあと二人の男たちは、反対側の100ヤードほど先を見回していました。荷車の前の、引き具をかけられた女たちは不安そうに見えました。太った男はイヤリングと、金の台座のサファイアのペンダントをつけていました。髪は黒くて長く、手入れはよくされていないようでした。汚くて櫛もあまり入れていないようです。青と黄色の絹で後ろに縛ってありました。紫のサンダルは、紐に真珠があしらわれています。サンダルはもはやほこりにまみれ、真珠はいくつかなくなっていました。小さくずんぐりした手には、いくつか指輪がはめられ、手も爪も汚れていました。この男は、個人的習慣に関して、かなり気難しいのかもしれないと感じました。でも今は、明らかにそうではないようでした。憔悴し、心配事がありそうでした。荷車から100ヤードほど離れた草原での捜索から、灰色の髪で片目の男が戻ってきました。何も見つけられなかったと推測しました。男は太ったずんぐりした男を「ターゴ」と呼びました。
ターゴは丘の上を見上げました。丘の上からちょっと下った所に立った男が手を振り、手を上げて肩をすくめました。何もなかったようです。
ターゴは深く息を吸い込みました。目に見えて緊張を解いていました。
そしてわたしを見つめました。
わたしはとびっきりかわいい笑顔で微笑み、「ありがとう、助けてくれて」と言いました。
「わたしの名前はエリノア・ブリントンです。地球という惑星の、ニューヨークに住んでいます。すぐに帰りたいんです。お金はあるから、連れて行ってくれるなら謝礼は保証します」
ターゴはいぶかしげにわたしを見つめました。
でも英語はわかるはずでしょ!
別の男が戻ってきて、何も見つけられなかったことを報告したようでした。多分監視させるため、ターゴは男を後ろに戻し、丘の上の男の一人も呼び戻しました。もう一人はそこに残しました。やはり監視させるためだろうと思います。
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訳者の言い訳と解説
第6章のタイトルが「奴隷商ターゴとの邂逅」なので、
奴隷商だというのはお分かりと思いますが、
「青と黄色」は奴隷商に割り当てられた色です。
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