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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
5. 三つの月(3)
船には動きがないようで、周りに鳥が何羽か飛び交っています。
中に食べ物があるかもしれないわ。ゆっくりと、びくびくしながら、船に一歩一歩近づいて行きました。鳥のさえずりが聞こえました。
遂に、船から20ヤードあたりに恐る恐る回り込みました。
船は裂けて開いていて、鉄の板ははがれて曲がり、焦げて火ぶくれしていました。
生き物の気配はありません。
半分草に埋まっている船に近づいて行きました。鉄の大きな裂け目の一つから、中をのぞき込みました。縁は溶けて固まっていました。所々に鉄が溶け出して垂れていて、刷毛で塗ったペンキが重くしたたり固まったかのようでした。船の中は黒く焦げていました。あちこちにあったパイプは破裂し、パネルはばらばらに裂けて複雑な中身が露出し、中の回路は黒くなっていました。厚い、ガラスか水晶かプラスチックかのあちこちの舷窓は、割れていました。
鉄の板の上で、裸足の足で壊れたボルトを踏んでがくっとなったけれど、息つめて船に入って行きました。
誰もいないようです。
船の内装はこぢんまりと整えられ、備品とチューブの間や、パイプと計器の間に小さいスペースがあるだけでした。通路は時々曲がったパイプで半分塞がっていたり、絡まったワイヤーが横から飛び出したりしていて、なんとかかき分けて進みました。
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