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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
5. 三つの月(5)
ぞっとしました。食べ物や武器を探したいと思って、船を駆け抜けました。乗組員の部屋を見つけました。ロッカーと六つの簡易ベッドと鏡がありました。ベッドは三つが壁際にあり、二枚の壁で固定された二段ベッドでした。ロッカーは壊れて開いていて、中身は空でした。ベッドの一つの脇に、血が付いているのに気がつきました。
部屋から急いで出て、小さな調理室を見つけました。隅には小さな犬ほどの大きさの動物が、背を丸めて何かをかじっていました。突き出た口を持ち上げ、しゅうしゅうと唸り威嚇してきて、首と背中の毛を突然パチパチと音を立て逆立てました。
わたしは悲鳴をあげました。その動物は二倍ほどの大きさになったように感じました。
蓋がはじけ飛んだ金属の容器の上に身を乗り出し、丸まって皿を守ろうとしていなくもありませんでした。
その動物は絹のように艶々した毛で、目は炎のようにきらめいています。まだらで黄褐色でした。口を開けまた威嚇の声を上げました。針のような歯が三列に生えていました。先に見た小さな動物と違い、足は四本だけでした。あごから角のような牙が突き出ています。きらめく邪悪な目の上に、頭から黒い角が二本隆起してきました。
わたしは空腹で気が立っていました。戸棚を開けるとコップがいくつかあるだけでした。
ヒステリックに悲鳴を上げて、その動物に金属のコップを投げつけました。
動物は歯をむき出して唸り、コップが後ろの金属の壁にぶつかると、さっと走り去りました。絹のような体がわたしの足にぶつかり、調理室から走り出して行きました。毛のない巻き上がったしっぽをしていました。
叫びながら調理室のドアを閉めました。
戸棚も引き出しも箱も、全部開けました。食べられるものはみんな持って行かれたようでした。餓死するじゃないの!
調理室の鋼の床に座り込み、すすり泣ました。泣いてから、蓋がはじけ飛んで中身がさらされた、醜い嫌らしい絹のような毛の動物が食べていた、平らな金属の容器のところに行きました。
息も詰まりそうに、吐きそうになりながら食べました。
それは肉で、厚みがありきめの粗い牛肉のような、でも牛肉ではないものでした。
手と指で、容器からかけらまでかき集めました。足りなかったけどむさぼり食いました。肉汁最後の一滴まで、指を吸いさえしました。
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