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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
5. 三つの月(2)
周りを見回しました。
自分から数百ヤードかそこらに、金属の砕けた塊がありました。亀裂の入った黒い金属の構造物が、半分草に埋まっていました。
船だわ。
わたしの足首には、もう足かせが付いてないことに気がつきました。外れていたのです。
捕らえられた時の服のままで、皮色のパンツ、黒いベア・ミドリフのブラウスでした。サンダルは地球の林で無くしました。わたしが取り乱した動物であるかのように、的を外さず追ってきて、罠に陥れた小さな黒っぽい船から逃げていた間です。
船から遠くに走り去るべきだと思いました。でも金属の塊の周りには、生き物の気配はしません。それに、ものすごくお腹が空いています。小川の方に這いつくばっていき、四つん這いで口に水をすくいました。
流れの底の黄色い花だと思っていたものが、小川の冷たい表面を割り、小さい黄色の魚の群れになったので、びっくりしました。
のどを潤しました。
船から離れたいわ。どこかにあの男たちがいるかもしれない。
あの黒いチュニックを着た男たちにも、カプセルの機械を扱っていた上層部らしき男たちにも、恐怖を覚えました。
地球では、男を恐れたことはありません。わたしは男を嫌悪していたし、軽蔑していました。男ってものは気に入られたがって、とても操りやすくて、いつも言いなりで、ものすごく無意味で、弱くて、従順で。でもあの黒いチュニックの男たちにも、機械を操っていた男たちにも、わたしは恐怖を覚えました。恐怖を感じた初めての男です。最後の男になることは、ないでしょう。
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